ベトナム不動産投資と税金 1. 不動産投資と税金 不動産投資を検討するにあたって、将来の税金を検討することは、重要な要素の一つです。 不動産は毎月の賃貸料金から生まれるインカムゲインと、将来不動産の売却により生まれるキャピタルゲインによって利益が発生します。 だからと言って、得た利益を申告しないなどの違法な脱税をすれば、将来税務署から調査が入り、予想していなかった事態を招くことになります。 そのため、不動産投資の利益を確実に将来の再投資や生活資金に充てるためにも、税金を理解しておくことは大変重要です。 注)この原稿はベトナム不動産投資を前提として、関連する項目を開設していますが、個別の不動産取引に掛かる税金を保証するものではありません。 また、税率など変化するものがあります。2016年現在の税率をもとに記載しています。 2. 居住者、非居住者の違い ベトナムで不動産投資を考える場合には、ベトナムと日本の税金の計算における「居住者」と「非居住者」の違いを理解する必要があります。 ベトナムの居住者とは ① 暦年(1月~12月)で183日以上ベトナムに滞在している ② 最初の入国日から起算した12か月のうち183日以上滞在している ベトナムに恒久的住所を有する場合のどれかに該当すると、全世帯所得に対してベトナムで課税されます。 ベトナム居住者であっても、日本企業の役員であれば日本国税である所得税を約20%納税する必要があります。 ただし地方税は1月1日の住所がどこにあるかで判断されるため注意が必要です。 3. 日本の居住者、非居住者の判定 日本の「居住者」又は「非居住者」の判定は、明確な日数での基準だけではなく、生活の実態がどこにあるかを客観的な事実から判断します。 日本のルールで「居住者」とは、国内に住所(生活の本拠)があるか、又は現在まで引き続いて1年以上国内に生活の実態がある場合を言います。 個人が日本と外国の2か国間を行き来するなど、滞在地が2カ国以上にわたる場合などにその住所がどこにあるか判定するためには、 例えば、住居、職業、資産の所在地、親族の居住状況、国籍などの客観的な事実から判断されます。 つまり、滞在日数のみによって判断するものではないことから、外国に1年の半分(183日)以上滞在している場合であっても、 日本の税金の計算において「居住者」と判断されることがあります。 4. ベトナムと日本の個人所得税(概要) 項目 ベトナム 日本 課税期間 暦年(1~12月) 暦年(1~12月) 所得(利益) ベトナム居住者の場合は全世帯所得に対して課税 全世帯所得に対して課税 申告期限 3月31日 3月15日 税率 累進課税 35% (非居住者の場合は1律20%) 累進課税 最高55% (地方税含む、復興税は別) 不動産賃料収入に対する収入 5%(但しVAT別途) 賃料から諸経費を引いて確定申告後総合課税 不動産売却益に対する税金 キャピタルゲイン税はなし (不動産譲渡税2%課税) キャピタルゲインに対して確定申告後総合課税 (5年以内の短期譲渡所得は39%+2.1%復興税=41.1%が課税される) ※役員報酬にかかる課税(日越租税協定第16条) 給与等に関しては、原則勤務が行われていない国では、税金が課税されないこととなっています。しかし、日本側の法人の役員がベトナム居住者として駐在する場合で、日本の会社から役員報酬を得ている場合には、日本側で課税されます。 5. ベトナム不動産を賃貸した場合の税金 ① 日本居住者の場合 ア)日本での税金 日本「居住者」の場合には賃料所得を計算する際に経費が認められます。インターネットでは以下の12項目が、日本の不動産取得時の主な経費として認められると記載されていますが、海外不動産の経費がどこまで認められるかは分かりません。 (1)租税公課 (2)損害保険料 (3)減価償却費 (4)修繕費 (5)借入金利息 (6)管理費 (7)交通費 (8)通信費 (9)新聞図書費 (10)接待交際費 (11)消耗品費 (12)その他税理士に依頼した費用 また日本の法律に従って減価償却が可能です。また、賃料から経費を差し引くことができます。とにかく領収書は大切に保管しましょう。(3)の減価償却費は日本居住者のみ適用できます。 詳しくは海外不動産に詳しい税理士にご相談ください。 イ)ベトナムでの税金 対象となる不動産がベトナムに所在するため、ベトナムの「非居住者」として、ベトナムでも賃料収入に対して課税されます。税率は一律で個人所得税5%+付加価値税5%取引適用=10%となっています。 ② ベトナム居住者の場合 ベトナム居住者の場合は給与個人所得税とは別に、賃貸所得税を支払います。日本は総合課税ですがベトナムでは給与所得以外の課税所得とされます。 分類は資本投資所得となるため居住者、非居住者に関わらず同じ税率5%が適用されます。 6.ベトナム不動産を譲渡した時の税金 こちらも分類は不動産譲渡所得となり、給与所得以外の個人所得になります。ベトナム不動産ではキャピタルゲイン税が無いため、 居住者、非居住者に関わらず一律2%が適用されます。以前は譲渡対価総額の2%あるいは譲渡益の25%を選択できましたが、 譲渡対価総額の2%課税方式のみとなりました。 ベトナムの不動産に関する費用 2016年現在 コンドミニアム購入 発生時期 不動産購入 不動産登記税 物価価格の0.5% ピンクブックと呼ばれる「家屋所有権利書」を取得 完成後 不動産購入税 10% VATと呼ばれる消費税、通常は販売価格に含まれる 契約時 修繕積立金 2% 50年分一括払い 完成後 売買契約書 翻訳料 20~40万円 ご依頼される場合のみ 契約時 土地代 数% 販売価格に含まれる(所有登記はできない) 契約時 不動産所有 不動産所得税 0 年間家賃1億VND(約5000 USD)未満の場合 完成後 家賃の5%+VAT5% 年間家賃1億VND(約5000 USD)以上の場合 完成後 賃貸経営登録税 50 USD/年 - 完成後 固定資産税 0 建物固定資産税はない - 管理費 0.5 USD/㎡~ コンドミニアムによって異なる 完成後 修繕積立金 0 完成後管理組合によって決定する場合がある 完成後 火災保険 0 コンドミニアムによって異なる(高級物件は加入義務あり) 賃貸後 相続税 0 法定相続人は0 遺言相続人は不動産登記税0.5%+不動産評価格の10% 相続時 贈与税 0 もらう人:不動産登記税0.5%+不動産評価格の10% 贈与時 所有権 50年×2 2015年7月からコンドミニアムと戸建て住宅に適用、1回更新可能 登記後 減価償却 47年 日本で減価償却は可能(ベトナムではできない) 賃貸後 不動産売却 譲渡税 売却価格の2% 譲渡者が払う場合 売却後 キャピタル ゲイン税 0 - 売却後 ※日本での申告は顧問税理士にご確認ください。 ※本資料の内容はインターネットなど信頼性が高いと思われる情報源から入手し、正確と期するよう努力しておりますが内容を保証するものではありません。 物件契約する際にはデベロッパーから提示される契約書書面内容を十分にごりかいいただいたうえでご利用ください。ベトナムの法律・税制は頻繁に改正されることが ありますのでご注意ください。 7.外国税額控除 日本の居住者がベトナム不動産を賃貸又は売却した場合には、ベトナムと日本で同じ所得に対して税金が生じる可能性があります。 その場合、日本とベトナムとで、二重に課税が行われることになるため、日本の税金計算においてベトナムで納めた税金を控除することが認められています。これを外国税額控除と言います。 なお対象となる個人の所得によっては、ベトナムで納めた税金の全額は控除できない可能性があります。詳しくは担当の税務署又は税理士にご確認ください。