ベトナムの財政状況は安全か? ベトナム不動産購入者の方よりご質問がありましたので、ベトナムの財政状況につきましてまとめてみます。 ご質問の内容は、 1.他の新興アジア諸国の中でベトナムは特に危険な状況にあるのではないのか? 2.日本の財政危機とベトナムは同じではないのか? ということでした。 さて、本当にベトナムの財政は日本のように財政破産状況にあるのでしょうか? まず皆さんがよく目にする経済成長率ランキングを見てみましょう。(出典:世界のネタ帳) ■アジアの2017年経済成長率ランキング 成長率ランキングでベトナムは、アジア7位で6.812%となっています。5位~7位は全て6.8%台なので、中国・ラオス・ベトナムは同率5位と言えるでしょう。 それでは、次に財政健全度の指標である、政府総債務残高対GDP比ランキングを見てみましょう。 ■アジアの2017年政府総債務残高(対GDP比)ランキング 最初のご質問は、 Q1.他の新興アジア諸国の中でベトナムは特に危険な状況にあるのではないのか? 東南アジア不動産投資でよく出てくる国を見ると、カンボジア35.78%、タイ41.62%、フィリピン37.32%で健全度が高いといえます。しかしベトナム、マレーシアも50%台なので、他国に比べてかなり悪いということはありません。これらの国は健全度指標の 65%を超えたことはありません。 次のご質問は、 Q2.日本の財政危機とベトナムは同じではないのか? 下記の表はベトナムと日本の政府総債務残高(対GDP比)を比べたものです。 日本はアジアどころか、世界ダントツNo.1の債務国236.39%です。金メダリストで世界に日本に対抗できる国はありません。(悪い意味ですが・・・)上図のようにベトナムと比べると、赤ん坊と老人位の差があります。つまり財政危機状況は日本とベトナムは全く違うということです。 それでは何故破産しないのでしょうか?それはお金を貸している銀行がまだ貸せる、信用力?があると判断しているということですね。しかし日本は外国からは借りていませんので、貸し剥し、貸し渋りにあいません。 お金は日銀が印刷して、赤字国債を買い取りますから(間接的に)、理論的には永遠に借金が出来るというわけです。日銀は政府の意向通りに印刷していますから(現在の所)、貸し剥し、貸し渋りはなさそうです。 ベトナムの国債購入者は、ベトナム人投資家と商業銀行です。これは、日本とまったく同じ構造ですね。外国人投資家はVNDの下落を嫌がり投資していません。また、中央銀行が独自通貨VNDを印刷していますので、いくらでも印刷できるという点も日本と同じです。 ギリシャはユーロでしたから、自国で印刷することは出来ませんでした。 日本は毎年80兆円ものお金を印刷して、赤字国債の購入資金に充ててきました。しかし黒田日銀総裁の異次元緩和から6年目になりますが、景気回復の予兆はありません。物価上昇2%目標も全く達成できていません。これだけのお金が市中に流れると、一般的にはハイパーインフレになりますがインフレにもなりません。ゼロ金利政策なのに借り手がいないのです。 銀行の利子率よりも事業での利潤率のほうが高ければ、企業は事業投資を始める。それならば、人為的に利子率を下げてしまえば結果的に利潤率のほうが高くなるから、企業は安い金利でお金を借りて新しい事業をしようという気になるだろう。だから景気が悪いときには金利を下げればいいとケインズは考えました。世界の多くの中央銀行が、不景気時に金利を下げて景気をよくするという方法をとります。 ところが日本では、1990年代にバブルがはじけたあと、金利をどんどん下げてほとんどゼロという状態にしても景気は回復しませんでした。 ケインズはこれを「流動性の罠」と呼んでいます。金利がほとんどゼロでお金が借りられるにもかかわらず、企業の投資がぜんぜん伸びないのです。 なぜゼロ金利政策に効果がなくなってしまったのでしょうか? これは、いまの社会情勢のままでは先行きが不安で将来に展望がないから、たとえゼロに近い金利でお金を借りられても、企業は投資をしようと考えなくなるからです。ケインズの時代にはそのようなことは起こらなかったので、「理論的にその可能性がある」とだけ彼は指摘していましたが、いまの日本はまさにその状態です。 所得が減る→消費が減る→生産が減る→さらに所得が減る→さらに生産が減る。これを「景気後退のサイクル」と言います。世界中の経済学者が日本破産を回避できるのか?見守っています。少子化、世界最速の高齢化、移民政策を取らずに借金を減らすことが出来るのか? ベトナムの最新政策金利は4.25%ですから、まだまだ下げる余地があります。また、国民が将来のベトナムに希望を持っています。そのため景気が良くなり、経済成長率が高まるという好循環となります。所得が増える→消費が増える→生産が増える→さらに所得が増える→さらに生産が増える。これを「景気拡張のサイクル」と呼びます。今のベトナムはまさにその時を迎えています。 それでは、政府総債務残高は何パーセントで破産するのでしょうか? アイスランドが破産した2008年時点の政府債務対GDP比は、70.33%です。 年収500万円の家庭が、350万円借金したら破綻したということです。 1位は破産候補の日本ですが、2位のギリシャは200%で実質破産しました。同じ家庭だとすると1000万円借金したということです。3位は160%のイタリア、4位グループは、フランス、イギリス、アメリカで120%付近です。 つまり何パーセントだと破産するという定義はありませんが、一般的に安全な指標として65%という数字があります。 これは信用力という審査的な問題ですね。年収が500万円でもきちんと借金を返済して、まだ返済余力があると考えると、銀行は追加融資をします。しかし返済能力が無いと判断すると、貸し剥しにあいますね。まあ65%までは審査なしで借金できるということでしょうか。 上記の表からもベトナムが他の新興国に比べて、政府債務残高が多いということはありません。まだまだ健全な財政と言えるでしょう。 それでは、何故日本は236%もの金メダリストなのに破産しないのでしょうか?エコノミストの多くは「日銀が国債を買うことが出来るからデフォルトしない」と述べていますね。代表的な意見は、①マネタイゼーション論②シーニョレッジ論③純債務論④対外純資産論⑤国債ゼロ金利論 に分類されます。 ここでは、詳しいことは省いて、それでも破産確率は70%位あると考えられるということです。 残りの30%は、2016年10月から10年債の金利を0%に誘導する、金融政策いわゆる「金融抑圧」 が成功するかどうかにかかっていると思います。物価が2%に上昇しても金利が0%台が続くなら危機は続いても、デフォルトは回避できる可能性があります。しかし、もし失敗して金利が上昇したら破産を回避することは出来ないと思います。 次にプライムリーバランスを見てみましょう。プライムリーバランスとは、財政収支において、借入金を除く税収などの歳入と、過去の借入に対する元利払いを除いた歳出の差のこと。そのバランスが均衡していれば、借金に頼らない行政サービスをしているということを表すが、赤字なら後々に借金が増えていることを示す。プライムリーバランスの赤字が続いている限り、それを埋めるために国債発行残高は増加せざるをえない状況が継続する。ですからプラスであることが望ましいわけです。 基礎的財政収支(対GDP比)の推移(1980~2018年) (ベトナム, 日本) プライムリーバランス 日本は1993年にマイナスになった後、25年間一度もプラスになったことがありません。そのため政府総負債が減少することはありません。赤字国債を発行し続けて日銀が買い取り続けるしかありません。 しかし長期国債の金利が上昇すると、利払いが莫大になり破産します。 ベトナムはあのリーマンショック時でも、プラスに誘導することが出来ました。ベトナムのGDPは約25兆円、国家予算は約4.5兆円、国家収入額は約4兆円。5000億円位債務超過となります。それをカバーするために赤字国債の発行もありますが、共産国特有の資産があります。ベトナム全土は全て国家が所有しているため、この土地の利用権を民間企業や外国企業に貸し出すことにより、巨額の資金を手に入れることが出来ます。ベトナム全土で外国企業に、貸し出している土地は僅か2%程度です。また、ODA、FDI、越僑から合計年間3兆円以上の資金を調達しています。 しかし、ベトナムにも課題はあります。ベトナム経済の再構築(改善)のための前提は、公的投資の再構築、銀行システムの再構築、国営企業の再構築の3つです。これらの改善には時間がかかりますが、着実に進歩はしているところです。 ■財政破産は、政府の破産である。世帯と企業の破産ではない。 財政破産というと、終戦後の焼け野原といったイメージを想像する人が多いですね。預金・年金・給与は無効になるほどの、ハイパーインフレーションを想定する人も多いと思います。預金は1000万円まで保護されますが、預金封鎖が行われるかは分かりません。しかし、建物、工場、店舗、オフィス、企業、道路、鉄道、住宅、車は破壊されず、そのまま残ります。円安になり物価は上がりますから、相対的に円での買い物は大変になります。その分輸出が増え、訪日外国人も増えて3~4年で回復するのではないでしょうか? 海外分散投資をしてきた人たちは、ここにチャンスが訪れます。オーバーシュートして下落した株、不動産、国債は50年に一度の買い時が来ます。ベトナムで貯めてきた賃貸収入や物件売却のキャピタルゲイン、USD預金などを使って暴落した日本の株、不動産などを買いあさるのです。 このビッグチャンスを逃さないように、今から着々と準備を勧めましょう。 2018/08/16