海外不動産の税務 日本での申告時に認められる経費とは? 最近お問い合わせの多い海外不動産取得後の税務についてまとめてみたいと思います。 税務は大きく分けて、賃貸時、売却時、相続時に分かれます。日本居住者の方は日本の法律が適用されますので、日本の不動産を購入したときと同じ経費を計上することが出来ます。 1.賃貸時 賃貸開始した年度から確定申告にて、不動産投資の教科書によると12種類の経費を日本で計上することが出来るとされています。 不動産投資時に認められる12種類の経費とは以下の経費を指します。 (1)租税公課 (2)損害保険料 (3)減価償却費 (4)修繕費 (5)借入金利息 (6)管理費 (7)交通費 (8)通信費 (9)新聞図書費 (10)接待交際費 (11)消耗品費 (12)その他税理士に依頼した場合にかかる費用 さてこの項目をベトナム不動産に当てはめてみましょう。 (1)租税公課 ベトナムコンドミニアムには固定資産税はありませんが購入時に付加価値税(VAT)があります。建物価格の10%となります。 (2)損害保険料 日本では賃借人が加入しますがベトナムでは大家が火災保険等に加入しますので当てはまります。 (3)減価償却費 日本のマンションはRC構造なので47年で償却します。海外不動産も同じですが、 ベトナム不動産は鉄筋レンガ造りなので、日本での耐用年数は 38年とも言えます。 これには条件があり、レンガ造りであることを証明する書類が必要になります。 提出してくれるデベロッパーとそうでない ところがありますので、一概には言えませ ん。また、下表にある通り鉄筋コンクリートとレンガ造りのハイブリッドで、 日本にない建築方法なので、解釈もわかれるところです。詳しくは税理士と相談しましょう。 また、ベトナム居住者はベトナムでの減価償却は出来ません。 これには条件があり、レンガ造りであることを証明する書類が必要になります。 国税庁HPより (4)修繕費 ベトナム不動産は基本的にプレビルドで購入しますので新築内装費となります。 これはすべて一括ではなく設備によって償却年数が判断されると思います。 修繕積立金については毎月の支払はありませんが、購入時に建物価格の2%を一括して支払います。この費用が該当します。 (5)借入金利息 外国人が購入する場合、ベトナム不動産は現地で借入することが出来ません。 そのため日本の銀行で海外セカンドローンを組んだ時に、 その利息を経費として申請します。 (6)管理費 日本と同じように面積に応じて毎月支払います。そのまま経費計上が可能です。 (7)交通費 ① 不動産投資会社が主催したセミナーに参加するための交通費 ② 管理会社などと打合せするための交通費 ③ 物件を見に行くための交通費 等が経費として認められます。領収書を必ず保管しましょう。 (8)通信費 管理会社と連絡を取る国際電話、現地購入のSIMカード、インターネット等ですが、全額落とせるかは税理士と相談しましょう。 (9)新聞図書費 ベトナム不動産の動向、世界経済の動向などと言った海外不動産経営の業務に影響がある新聞情報などの費用を経費として計上することができます。また、ベトナム不動産事業に関係する本を購入した場合も、経費として計上できます。 (10)接待交際費 管理会社との打合せ、税理士との打合せ、不動産投資仲間との打合せ等がありますが、ベトナム不動産に限定した領収書にしておいた方が良いでしょう。 (11)消耗品費 物件撮影のデジカメ、確定申告やネット検索のためのパソコン、プリンター等が考えられます。 (12)その他税理士に依頼した場合にかかる費用 ご自分で行うこともできますが、税理士に頼んだ場合は確定申告費用を計上できます。 2.売却時 国税庁のHP[平成28年4月1日現在法令等]では以下のように説明されています。 譲渡所得は、土地や建物を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。譲渡費用とは、土地や建物を売るために直接かかった費用のことです。 譲渡費用の主なものは次のとおりです。 (1) 土地や建物を売るために支払った仲介手数料 →サポート料金が該当します。 (2) 印紙税で売主が負担したもの →ベトナムには印紙税はありませんが、政府に支払う書類作成費用があります。 ご自分で行うこともできますが、税理士に頼んだ場合は確定申告費用を計上できます。 また、ベトナムにはキャピタルゲイン税はありませんが、譲渡税を2%支払います。 日越租税条約に基づいて外国税額控除申告が可能と思われますので、この点も税理士とご相談ください。 (3) 貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料 →ベトナムでは賃貸契約時にデポジットとして、2か月分の家賃を預かることが一般的です。大家の事情で明け渡しをしてもらうときは、2か月分を返金することで明け渡しが成立するため、立ち退き費用は発生しない習慣となっています。賃貸契約により異なりますのでご注意ください。 (4) 土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額 →ベトナムでは外国人は土地だけの取得ができません。土地と建物は一体なので建物を取り壊しての売却は認められません。 (5) 借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など →ベトナムコンドミニアムは2015年7月からは所有権ですが、それ以前に購入した外国人に借地権購入をされている方がいます。借地権購入された方が売却するときは、所有権に変更してから売却となりますので、その時の名義書換料は経費となります。 このように、譲渡費用とは売るために直接かかった費用をいいます。 したがって、修繕費や固定資産税などその資産の維持や管理のためにかかった費用、売った代金の取立てのための費用などは譲渡費用になりません。 <p土地や建物を売ったときの譲渡所得に対する税金は、事業所得や給与所得などの所得と分離(分離課税)して、計算することになっています。譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える土地や建物を売ったときの税額の計算は、次のようになります。税額=課税長期譲渡所得金額×15%(住民税5%)、但し平成25年から平成49年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。つまり分離課税は22.1%となります。 3.相続時 海外不動産についてどのような場合に相続税がかかるでしょうか。 次の場合には、海外にある財産についても相続税がかかります。 1.相続人の住所が日本にある場合 2.相続人(日本国籍)の住所が日本にない場合には、被相続人又は相続人のどちらかが相続前5年以内に日本国内に住所があるとき 従って、相続人の住所が日本にない場合であっても、被相続人の住所が日本にある場合は、相続人が日本国籍であれば、海外にある財産についても相続税がかかります。 なお、相続人の住所が日本にない場合(2に該当する人を除く)には、海外にある財産については、日本の相続税はかかりません。なお、その財産の評価は時価によります。 海外不動産の相続税対策としては、相続人の海外移住、生前贈与、遺言による遺産分割などいろいろあるようですが、詳しくは税理士とご相談ください。 海外不動産については相続人が所在地や価格などの情報をつかみにくいため、遺言状を作成しておくことをお勧めいたします。 2017/05/11